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    ダルマダースの『インド講座』

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    サントゥールの音色 (1)

    2016 - 08/22 [Mon] - 19:35

     ベナレスに戻り、サントゥール製作者のデヴィさんのお宅を時々訪ねて、お喋りしています。

     デヴィさんは、ムンバイで、念願のシヴクマール・シャルマ師(シヴジ)が長年演奏に使った「鳥の柄のサントゥール」を手に取って計測する事ができ、今また気持ちも新たに、サントゥール作りに精を出しています。

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     「チューニングに関して、お褒めの言葉をいただきましたね。」

     「長年の研鑽をグルジが真っ先に評価してくださったのは、本当に嬉しかったです。その昔、最初に購入したサントゥールがあまり良い楽器でなく、1時間チューニングして10分演奏すると、また何十分もチューニングして、一日中、ほとんどチューニングしていたんですよ。だんだん自分で改造するようになり、最終的には、ボディーごと全部、自分で作りなおしてしまったんです。チューニングする、というのは音程全体のシステムですよね、それを、楽器の様々なアンス(部分)の改善で如何に完全にするか、長年の経験があります。」

     「スワル(音程)によって、弦は緩めだったり、きつめだったりしますね、ですから、ボディ(木箱)の形は、とても重要です。今回あの『鳥の柄のサントゥール』を計測させてもらって、私は、自分の長年の経験に自信を持ちました。これは秘密なんですよ・・・この事はこれ以上、書かないでくださいね。」

     「チューニングは、ラーガ(メロディを構成する基本音列)によって微妙な調節があります。シュルティに従って高めだったり低めだったりします。ですから、インド音楽ではチューニングするにも、ラーガの知識が必要です。ただ基準音に合わせれば良いのではありません。」

     「ボディと弦の間に、ブリッジ(駒)を挟んで、左右交互に、弦を高くあげます。右側と左側に、どのスワル(音程)を配置するかは、ラーガによって決まりますし、演奏者が独自に決める部分もあります。左右に、同じ音があることもあります、演奏のテクニック上ね。ですから、チューニングが出来るということは、サントゥールの場合、相当高度な音楽知識を必要とするんです。ただ音合わせしているだけじゃないんです。」

     「もともとのサントゥールという楽器の構造や弦の種類は、現在流布しているものとは、全く違うものでした。参考になりません。グルジが改良に改良を重ねて、作り上げたんです。」

     「低音部は、インドのカルナ社製のギター弦(4番)を張っています。その他の音には、鉄製のジャーマン・タール(弦)(音程によって3番から8番まで)か、ステンレス製のジャパニ・タール(26番、28番、30番)を使うこともあります。鉄製の弦の方が、ステンレス弦よりも音が大きいし、光った音がしますね。しかし、じきに錆びます。」「シタールの場合は、一般的に、ジャーマン弦の場合は、タラフに0番、メインに3番を使いますね。ステンレス弦の場合は、タラフに30番、メインに32番を使っているようです。ですから、サントゥールとは、太さが違います。」

     「サントゥールの場合、叩いたときのスワル(音程)と同時に、グンズ(波紋音、こだま)がだいたい15秒くらい続きます。その間にどんどんスル(メロディ)が進行していきますから、叩いて得るスワルは、たくさんのアース(残響)の広がりを醸し出し(かもしだし)ていきます。そのアースを、ボディ(木箱)で増幅させます。ちょうど、シタールのトゥンバと同じようにね。」

     「アース(残響)は多すぎてもだめなんですよ。」

     「グルジが指摘した、グルジが指摘した、ヒッティング・サウンド(叩いた時の、叩いた音)を消すのは、これからの課題です。ブリッジ(駒)の頭に、ハディ(骨)をつけてみます。ハディにカンチャ(溝)も付けます。このアイデアはグルジが発案したもので、私の場合は、もともとのサントゥールと同様に、ブリッジの頭はメタル貼りにしていました。その方が、音が開くからです。次ぎの作品は、ハディをつけます。」

    santur bridge
    (ボディから弦を浮かせる「ブリッジ(駒)」。中央が元の形。右はハディ(骨)を頭頂に付けたもの。この後、弦が滑らないようにカンチャ(溝)をつけます。左は、メタル。弦との接触点が非常に小さいので良く響きます。)

     「グルジは、メタリック・サウンドは好まれません。イランのサントゥールはとてもメタリックな音がしますね。ブライト(輝かしい:英語)音です。グルジは、インド・サントゥールの音を好まれます。」

     「インド・サントゥールの音というのは、クラシカルな音、やや閉じた、ゴール・アーワーズ(丸みのある音)。ベース音がしっかりしている音。チンチヤーティ・アーワーズ(子犬のキャンキャンした鳴声)でないものです。」

     「グルジが強く指摘したのは、コンサートでは必ずマイクで音を拾うから、マイクを通したらどういう音になるか、録音して聴いてみる事です。インドだと、1万人くらいの人の前で演奏する事だってある。サントゥールの音は繊細で脆弱なので、マイク・アンプ・スピーカーの質によって、最終的にどんな音になるか、そこまで知識を持つ必要があります。ただ、ヴォリュームを増幅させれば良いのか。それだけではない場合もある。エアー・マイクをどこに設置するか。あるいは、コンタクト・マイクの場合でもね。」

     「他の楽器のミーンド(ミール)に相当する、音を伸ばし、前後の音にスライドさせていく『ガシート奏法(摺り技法)』は、グルジの発案です。この奏法の為に、両手に持つ「カラム(別のヒンディ語でチャリ。英語でストライカー、あるいはスペクトラム。木製の打弦バチ)」には隠された工夫があります。私は更に、カラムの弦との接触部分に、最初から微かな切れ目を入れました。その程度はとても微妙です。普通は、たたいているうちに自然に切れ込みが入っていくのですが、それは弾き込まないと入りません。自然に出来る切れ込みは、形も偏っていたりするのです。グルジは、私の「カラム」について、何か言おうとしていましたが、言葉では表現されませんでした。」

     「サントゥールの音は、sound of water って言われてるんですよ。私の言葉で言うと、チャパク・チャパク・アーワーズです。ちょうど、滝の水しぶき、雨の音、水が跳ね返った時の音。あるいは、ガンジス河で船を漕いでいる時、櫂(かい)で水を掬う(すくう)時、水がチャパク・チャパク音を立てる、そんな音に例えられます。すごく、瑞々しい(みずみずしい)音です。」

     「グルジは、若い世代の人がサントゥールを演奏する時、聴衆は自分の音と比較するだろうと言い、自分の弟子達の為にも、高いクオリティーの音を、デヴィさんに求めましたね。」

     「あの『鳥の柄のサントゥール』を製作した職人の孫が、カシミールでいまもサントゥールを作っているらしいのですが、連絡は途絶えているそうです。それに、その人には息子はいない。そうすると、最終的にカシミールにはもう職人はいなくなってしまうでしょう。」

     「その昔、サントゥールの音に魅せられ始めたとき、『シルシラ』という映画のポスターに、シヴ・ハリの名前が出ていました。私はてっきり、シヴクマール・シャルマが映画に出演すると思って、大雨が降っていたけど、その映画を見に行きました。最後まで、シヴジの姿は映画の中にはありませんでしたが、随所にサントゥールの音が鳴り、最後までわくわくしっぱなしでした。映画の帰り、さらに雨足が増し、道路は冠水し、ビタビタになって家に戻りました。心はもう、サントゥールの音で一杯でした。降りしきる雨音、サントゥールの音、シルシラの場面で、私は全部、ビグ・ガヤー(濡れ濡れ)。」

     「次回は、更にグルジを満足させる楽器を持っていきます。」
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