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    デヴィ・プラサード・ソーンカル

    2016 - 08/22 [Mon] - 18:54

    deviji santoor


    カシミール地方の民族楽器であったサントゥールを、インド古典音楽を演奏するメジャーな楽器として世界に紹介し、現在のインド古典音楽界で最も有名なアーティストとしても知られている、シヴクマール・シャルマ。そのシヴクマール・シャルマが絶賛する「サントゥール製作者」がベナレスに住んでいる、という話はだいぶ前から聞いておりました

    メインガートからベンガリトーラーに入ってすぐの所に、新しく開いた楽器屋さん。なんとなく気になっていながら通り過ごしていたのが、ひょんなきっかけで立ち止まり中を覗くと、サントゥールがずらりと並んでいました。サントゥール製作者のデヴィ・プラサード・ソーンカル氏はとても気さくな人で、唐草文様の美しい、新作のサントゥールを脇に置きながら、おしゃべりが始まりました。

     「私は、もともとは、ベナレス・サリーのデザイナーだったんですよ。注文はたくさん来ていました。時にラジオ局が取材に来たり、デザインは注目され、その当時、おそらくベナレス中の織物関係者が、私の名前を知っていたと思います。

     デザインを考案している時、いつもラジオをつけて、音楽を聴いてました。古典音楽は大好きでしたが、ある番組で、シヴクマール・シャルマがサントゥールを演奏し、その柔らかく繊細で、かつ、ダイナミックな音楽に心がときめきました。それ以来「シヴクマール・シャルマ」「サントゥール」という二つの言葉が脳裏に焼きつきました。

     仕事はたいへん順調で、余裕が出てきたので、趣味で楽器に触りたいなと思うようになり、当時ベナレスにお住まいだった、アラウッディン・カーンの弟子、ドゥティ・キショール・アチャーリヤ氏のもとを訪ねました。ドゥティ・キショール氏はベンガル地方・ムルシダバードの太守(パシャ:ムスリム藩王)ムクタ・ガーチャー家の末裔につながる方です。何の楽器をやろうかと、シタールやギターを試みましたが、自分のフィーリングに合いません。それで師匠に「サントゥールが弾きたい」と申しますと、「おぉ、サントゥールを知っているのかい」と驚かれました。ラジオでシヴクマール・シャルマの演奏を聴いたことを話しました。今から25年以上昔のことですが、当時は「サントゥール」は、インド国内であっても、ほとんど知る人のいない楽器だったのです。

     師匠はどこからか楽器を調達してくださいました。しかし、膝の上において夢中で練習し始めたんですが、あのラジオで聴いて心ときめいた音が全然出てきません。私はその楽器は、売ってしまい、別のサントゥールを注文しました。しかし、二台目のサントゥールも、私のイメージする、あの繊細でかつダイナミックな音を出してくれなかったんです。それで、この二台目のサントゥールを少しずつ改造し始めたんです。そしてある時、コピーしながら、全く自分でサントゥールを作ってしまいました。サントゥールに出会って5年後くらいの事です。師匠のもとでラーガの練習もずっと続けていました。サリーのデザインもしていましたし、自作のサントゥールの改良にも没頭していて、毎日がとても楽しかったですよ。

     ある時、「ガンガー・マホッサブ(秋にガンジス河のガート沿いで行われる、UP州政府主催の音楽会)」で、シヴクマール・シャルマが演奏しました。初めて生で聴いたその演奏は、天界でアプサラス(天女)が舞っている様な美しい音楽でした。その演奏に、タブラで出演していたのが、カーシーナート氏でした。今、ベナレスにいらっしゃるカーシーナートさんではありません。サラダ・サハーイ(タブラのベナレス流派の祖師)の奥さんの関係の人で、実家はベナレスにあり、当時ムンバイで活躍し、シヴクマール・シャルマの演奏にはいつもサンガト(アカンパニー:共演)していた方です。もう、亡くなっています。

    kashinat jee

    (タブラ: カーシーナート氏   サントゥール: デヴィさん 1998年 )

     演奏会の後は、ますますサントゥールの改良・製作に精を出すようになり、ベナレスで演奏したり、教えることも始めました。

     1996年、シヴクマール・シャルマのベナレス演奏会の時、一緒にやってきたタブラのカーシーナート氏のご実家に招かれました。私の友人でカーシーナート氏とも昵懇(じっこん)の方が、私がサントゥールを演奏していること、製作もしていること、楽器はベナレスで評判がいいことなどを、話してくれていたのです。私は、自作のサントゥールを持って出かけました。カーシーナート氏は大変喜んでくださり、その場でタブラと合わせて演奏し、それを録音して、ムンバイに持っていかれました。同じ年、再びシヴクマール・シャルマの演奏会がベナレスでありました。演奏会の後、シヴクマール・シャルマ氏は、私を呼んでくれて、「デヴィ・ジー。アープカ・サーズ・アッチャー・バジター・ハエ(デヴィさん、あなたの楽器はとても良く鳴りますね)。」と褒めてくださいました。私は、自作のサントゥールをシヴクマール・シャルマ氏に見せました。シャルマ氏は弾きながら、楽器が重すぎること、ベースの音がもっと出るようにしたほうが良いこと、タール(弦)を変えたほうが良いこと、様々な提案をしてくださいました。私が誰からも習わないで、自分で楽器を製作し始めたことには、とても驚き、そして、愛情を持って真剣な意見を述べてくださいました。ものすごく嬉しかったです。

     その後、シヴクマール・シャルマ師匠がベナレスやアラハバードで演奏する時には、舞台に私も座るようになりました。同時に、新しく製作した楽器を師匠にお見せして、改良の方向性など、教えていただいています。

     今使っている弦は、ジャーマン・タールです。微妙な調整によって、音の鳴り具合が薄くなったり、太くなったりします。その感覚を楽器のサイズや材料の木(トゥーン材かチーク材)の乾き具合、セッティングで調整できるのは、演奏できる製作者だけです。カシミールの伝統楽器であるサントゥール。カシミールには製作者がいたんですが、ご存知の通り、独立後の紛争の為にばらばらになってしまいました。コルカタやムンバイ、デリーなど大都市にサントゥール製作者はいますが、彼らは、演奏はしないんです。私は、彼らには一度も会った事はありません。全く独自にベナレスで作っています。自分で演奏しますし、シヴクマール・シャルマ師匠からのサジェスチョン(提言)によって、改良を続けています。

     1996年はいろいろな事があった年です。日本のガイドブック『地球の歩き方』に私の名前が載ったんですよ。当時、何人もの外国人に、自宅でサントゥールを教えていました。その中に日本人の女性もいて、その女性の知り合いに「日本放送」のディレクターがいて、ベナレスにドキュメンタリーの撮影に来たんです。ばたばたしていましたがね。ガート沿いや私の家の中などで撮影していきました。

     2003年、日本人の二人の女性にサントゥールを教えました。私から楽器も購入して日本にお帰りになりました。

     今ここで作っている唐草文様のサントゥール、二台製作していて、良く鳴る方を日本に送ります。新作のサントゥールの鳴りについていろいろと話がある事と思います。それを踏まえて、次に、いよいよ、シヴクマール・シャルマ師匠の為に、サントゥールを製作しようと思っています。

     実は、知っているんですよ。シヴクマール・シャルマ師匠のお宅に、カシミールで製作された、かなり年代モノのサントゥールがあって、それはそれは格別に良く鳴るんです。師匠は、そのサントゥールは演奏会には使っていないんです。ですので、実物を見ることは、ベナレスに居る私には叶わない事です。ムンバイまでは遠いのでね。でも、サントゥールに出会って25年、製作し始めて20年、今年ちょうど私は50歳になりました。今の一番の目標は、その古いサントゥールと同じクオリティーの楽器を製作することです。」

    deviji santoor 02


     デヴィさんは、静かな口調、控えめな言葉遣いで、話してくれました。2000年に奥さんを亡くされ、その後、徐々に演奏会に出なくなり、生徒も取らなくなっていたのですが、今年(2007年)お店を開き、ベナレス市内での演奏会にも出るようになり、活動を再開させております。

     デヴィさんの住所
     Devi Prasad Sonkar
    D-17 / 93 Ahilya Bai Ghat, Dasashwamedh Varanasi
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