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    モンサント 遺伝子組み換え・ゲノム編集

    2017 - 09/12 [Tue] - 16:14

    種子の巨人モンサント、「遺伝子組み換え」の次へ
    編集委員 安藤淳

    2017/9/11 6:30日本経済新聞 電子版

    従来型の交配
    遺伝子組み換え
    ゲノム編集

     農業ビジネスの巨人、米モンサントが、遺伝子を自在に切り貼りするゲノム(全遺伝情報)編集技術による農作物の改良に本格的に乗り出す。従来型の交配、遺伝子組み換えに続いてゲノム編集を第3の柱と位置づけ、飼料用から食料用まで生産しやすく付加価値の高い農作物の開発をめざす。ドイツのバイエルが同社を約660億ドル(約7兆2千億円)で買収する背景にも、こうした高いイノベーション力への期待がある。

    モンサント研究所の屋上には総面積1万平方メートル近い温室が設置されている
    monsant001.jpg

     「まだほんの初期段階だから、それほどの人数を投入しているわけではない」。モンサントのトム・アダムズバイオテクノロジー担当部長はこう話すが、すでに50~100人をゲノム編集の研究に取り組ませている。「農家のニーズに応えるために」を合言葉に、乾燥に強く、土壌の質が悪くても育つトウモロコシ、大豆、トマトなどの実現をめざす。

     加えて、消費者の嗜好を意識した開発もこれからの目標に掲げる。たとえば健康によい油を搾り取れる大豆や、おいしいトマトなどだ。

     技術的には、こうした改良はそれほど難しいことではない。モンサントは様々な農作物の豊富なゲノム解析データを持つ。改変の有望な標的となる遺伝子も、ある程度特定できている。急速に普及しているゲノム編集の新手法「クリスパー・キャス9」や「同12」を活用し、ゲノム配列の一部を切り取るなどして効果を調べている。

     モンサントはクリスパー・キャス9の技術利用に関して、基本特許をもつ米ブロード研究所とライセンス契約を締結済みだ。さらに今年8月、韓国のバイオ企業トゥールジェンとも、同社のゲノム編集技術の利用に関するライセンス契約を結んだ。トゥールジェンが保有する、クリスパー技術の植物への応用に関する複数の特許を利用できるようになる。「自前主義」に陥らずに、役立ちそうな技術は外からも取り入れて競争力を高める。

     ただ、実際にゲノム編集によって改良した農作物が市場に出回るまでには「5~10年かかるだろう」とアダムズ部長はみる。最大の理由は各国の規制がどうなるか、はっきりしないためだ。

     モンサントによると、農作物のゲノム編集の最大の利点は病気になりにくく乾燥に強いなど、目的の性質をもつ作物の開発時間を大幅に短縮できることだ。ゲノム編集は「クリスパー・キャス9」などの手法を使えば市販のツールで簡単に、ゲノムの狙った部分をピンポイントで切断できる。修復時に配列を変えることも可能だ。

     昔ながらの交配による開発では、有望とみられる品種を掛け合わせ、育てて種をとって再び掛け合わせるといった作業を繰り返していた。何年もかけて目的の性質にたどりつくこの方法に比べ、ゲノム編集は、はるかに効率がよい。「実際に掛け合わせなくても、100万通りの子孫のゲノムを解析し、それらが持ちうる性質を推定できる」(アダムズ部長)

    ■遺伝子組み換えに比べて格段に正確

    ミズーリ州にあるモンサント研究センターでは毎日、国内外で収集した数千個の種子や葉からDNAをロボットで抽出している。これをシーケンサーと呼ばれる解読装置にかけてゲノムを調べたり、一塩基多型(SNP)と呼ぶわずかな配列の違いを明らかにしたりする。1日ごとに、テラ(テラは1兆)バイト単位の情報が得られる。それらをクラウド上に集め、統計処理などを経て最適な作物を選びだす。

     ゲノム編集はモンサントが得意としてきた遺伝子組み換えと比べても、利点が多いとみられる。遺伝子組み換えは外来の遺伝子を、ウイルスなどのベクターと呼ばれる「運び屋」に載せて入れる。挿入場所が狙った通りになるとは限らず、思わぬ場所に意図せぬ配列が入る可能性がある。正確さではゲノム編集が格段に優れているとされる。


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    米モンサント本社に近い研究所(ミズーリ州)には地球の人口増に伴う食料不足を解決するため、遺伝子組み換えが不可欠であると説明するパネルなどが並ぶ


     さらに、ゲノム編集はその植物自身がもともともっているゲノムの中で切断や修復をする。外来遺伝子を入れずに完結できる。このため、米農務省はゲノム編集で開発した作物が、遺伝子組み換えとは異なり規制の対象外になるとの見解を示している。「米国内なら、いまでも販売は可能だ」(アダムズ部長)

     今後、ゲノム編集農作物がどのくらい流通するかは、農家や消費者がどこまで受け入れるかによるが、少なくとも米国の農家の抵抗感は薄いとみられる。すでに遺伝子組み換えをしたトウモロコシや大豆、綿などを大量に栽培しており、遺伝子の改変があまりにも日常的なことになっているからだ。


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    遺伝子組み換えトウモロコシに比べ、非組み換え品(右)は虫食いや傷みが目立つ(米イリノイ州のスタン・クーンズ農場)

    ■「遺伝子組み換えのデメリットは皆無」と言い切る農家

     米国の穀倉地帯、ミズーリ州で総面積約18平方キロメートルにおよぶ広大な農場を経営する米国穀物協会のジム・ステューバー理事は、1998年ごろから遺伝子組み換え農作物の栽培を始めた。いまではトウモロコシ、大豆、綿花のほぼすべてが組み換えだ。病害虫が付かない性質をもたせたモンサントの「Btコーン」などから始め、除草剤耐性もあわせ持つものへと切り替えを進めた。モンサントの除草剤をまいても枯れないので、手入れがしやすい。

     ただし、あえて全体の数パーセント程度は、非組み換えトウモロコシも育てている。出荷用ではない。万が一、Btコーンに耐性をもつ少数の害虫が現れても、子孫を増やさないようにするためだ。

     これら非組み換えトウモロコシの栽培は「レフェージ(退避)栽培」と呼ばれ、Btコーンに耐性をもたない一般的な害虫が多数付く。そこへ耐性をもった虫がやってきて交尾しても、生まれる子どもは耐性をもたない可能性の方が、耐性をもつ確率をはるかに上回ると考えられる。言い換えれば、耐性をもつ虫の影響を、耐性のない多数の虫によって「薄めてしまう」のだ。

    モンサントが種子と除草剤の両方で高いシェアを握り、価格が高止まりすることへの懸念も一部にはある。しかし、ステューバー理事は「遺伝子組み換え農作物のデメリットは皆無だ」と言い切る。「育てやすいうえに品質は向上し、殺虫剤の使用も減るので見返りは十分」とみる。面積あたり収量は、遺伝子組み換え農作物導入前に比べて25%程度改善したという。周辺の他の農家でも「親子代々、遺伝子組み換え作物や、それを飼料とした家畜を消費し続けているが、何の健康問題も起きていない」などの声が多い。

     もちろん、少数ながら非遺伝子組み換え農作物にこだわる農家もある。ただ、流通に乗せるのは容易でない。穀物メジャーのアーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)の担当者によると「組み換え農作物と混ざらないよう設備をその都度清掃しなければならず、穀物の輸送ペースが鈍る」との理由から、非組み換え農作物の取り扱いをやめている。非組み換え品を受け入れる業者も、輸送料などを相当上乗せするという。

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    ミズーリ州のADMの穀物集積拠点は非組み換え農作物を受け入れていない

    ■ゲノム編集は細胞内に痕跡残らず、問題が起きても分析が困難

     モンサントにとって、遺伝子組み換え農作物が順調に広がっている現状では、ゲノム編集を急いで使う必要はないかもしれない。せっかくの利益の源泉を自ら枯らすことになりかねないからだ。

     一方、消費者がゲノム編集農作物をすぐに受け入れるかどうかは、まだよくわからない。ゲノム編集は遺伝子組み換えと違って細胞内に痕跡が残らないため、万が一問題が起きても遡って分析するのが難しい。それを「気味が悪い」ととらえる人たちもいる。

     このため、モンサントは当面、ゲノム編集作物の研究や試験栽培に力を入れつつも、製品化は焦らない。開発した作物の性質やコスト分析などのデータをそろえ、準備だけはしっかり整えておく方針だ。各国の規制の動向や農家、消費者の反応などを慎重に見極め、機が熟したと判断したら、一気に市場投入する戦略とみられる。その時、世界の農業に対する同社の支配力が一層強まるのは間違いない。

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